齋理幻夜（さいりげんや）は、宮城県丸森町でお盆の期間中たった一日、三時間程に限って催される夜のお祭りである。
　同町で江戸時代から昭和にかけて七代続いた豪商、齋藤家。代々の当主が齋藤理助を名乗ったことから店は齋理屋敷と呼ばれるようになり、今は町の郷土館であるその屋敷が祭りのメイン会場になる。
　齋理屋敷を中心とした町の一角は、屋敷が最も栄えていた時代にタイムスリップしたかのような、ロマンあふれる装飾が施され、千基を超える絵灯ろうが幻想的に夜を彩る。
　大正時代を思われる貸衣装も用意され、飛び入りでそれら衣装に身を包んで祭りに参加することもでき、そんな人々が闊歩する摩訶不思議な雰囲気の中、伝統芸能を駆使した一座の公演やコンサートなど、趣向を凝らした様々な催しが繰り広げられ、表通りでは昔懐かしい夜店が並び、賑わいを見せる。
　通りの先では、紳士服に身を包んだ男性が夜店でビールを一杯。
　年に一度、丸森は幻の夜に包まれる。